引っ繰り返る
ひっくりかえる
動詞
標準
文例 · 用例
これは一般の法則でないという処から、習慣的に続いて来た幕府というものを引っ繰り返したというのは、その引っ繰り返るという時の人の胸中に同情があって、その同情を惹き起すという事が出来なければ、あれは成功は出来ないのである。
— 夏目漱石 『模倣と独立』 青空文庫
だから頭から先へ突っ込めばのめって怪我をするばかり、また足をむやみに出せば引っ繰り返るだけと覚ったから、足を棒のように前へ寝かして、そうして後へ手を突いた。
— 夏目漱石 『坑夫』 青空文庫
中には手を伸ばしかけて、額を蹴られて仰向けに引っ繰り返る者もあれば、テーブルの上に上って行こうとして椅子から足を踏み外し、床の上で腰を抜かす者もある。
— 久生十蘭 『魔都』 青空文庫
暑い間は、伊東の別荘で寝て暮すことにして、行くのにも自動車を徐行させて、牛の這うようにノロノロと……車中で寝ていられるように、扇風機を取り付けたり、氷柱を入れさせたり、引っ繰り返るような騒ぎを演じているのです。
— 橘外男 『墓が呼んでいる』 青空文庫
そしてこの都会の人たちは世界というものは自分たちの住んでいるこの土地だけであって、この土地以外に人間の住んでいる国もまた、人間がいるということすらも全然知らずにいた……今度初めて我々が漂着してきたことによって、人々は引っ繰り返るような騒ぎをしているらしいということであった。
— 橘外男 『ウニデス潮流の彼方』 青空文庫
台所で水甕のひっくらかえる音などを聞きつけて、隣に借家していた大学生が裏口へ飛び出して来てくれた。
— 徳田秋声 『黴』 青空文庫
正月一日から地震がございまして、はなはだ縁起の悪い気持が致しましたが、果して陰謀やら兵乱やら、御ところの炎上、また大地震、落雷など、鎌倉中がひつくり返るやうな騒ぎばかりが続きました。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
」といふ裂かれるやうな叫聲に、私はひつくり返るばかりに驚いて飛びのいた。
— 水野仙子 『白い雌鷄の行方』 青空文庫