欣々然
きんきんぜん
形容詞-たる副詞-と
標準
joyful
文例 · 用例
彼は二年間の貯蓄の三分の二を平気で擲って、錦絵を買い、反物を買い、母や弟や、親戚の女子供を喜ばすべく、欣々然として新橋を立出った。
— 国木田独歩 『非凡なる凡人』 青空文庫
彼の手にかかった被害者のすべてが、無念の中に悲憤の中に、もだえ死、もがき死んだにも拘わらず彼坂下鶴吉は、欣々然として絞首台上に立ち、国家の刑罰そのものに対してなんらの恐怖を示さず、何等の羞恥をも示さず、自若として死んだことを知って私は実に憤忿の念に堪えないのであります。
— 菊池寛 『ある抗議書』 青空文庫
もしも、坂下鶴吉の欣々然たる最期が、――国家の刑罰に対してなんの恐怖をも感じない態度が、彼の悪人としての根性から自発的に出たものならば、私はなんとも申しません。
— 菊池寛 『ある抗議書』 青空文庫
九人の人間を殺しながら欣々然として絞首台上に立ち得るような恐ろしい人間に姉夫婦が殺されたことを、不幸中の不幸と諦めるほかはありません。
— 菊池寛 『ある抗議書』 青空文庫
又囚人が幸福に禁獄され欣々然として処刑されると云うような心持を、典獄なる職務にある人が讃美しても差支えないものでしょうか。
— 菊池寛 『ある抗議書』 青空文庫
私の如き遺族の数多くが肉親を殺された為に悶々の苦しみに苦しんで居るにも拘わらず、その加害者が監獄の中でも幸福な生涯を送り、絞首台上に欣々然として立つことを、典獄迄が讃美するに至っては被害者なり被害者の遺族なりは一体どう思えばよいのでしょうか。
— 菊池寛 『ある抗議書』 青空文庫
彼の信仰を、ゴマカシと見、絞首台上で欣々然たる容子をしながらその実は差し迫る死の前に戦慄しただろうと想像することが、私のセメてもの慰めです。
— 菊池寛 『ある抗議書』 青空文庫
そして其の誰もが、欣々然とガンネス農園の一軒家へ伴れ込まれたきり、再び姿を現さない――。
— 牧逸馬 『斧を持った夫人の像』 青空文庫