駆け上る
かけのぼる
動詞
標準
文例 · 用例
下り立った街路からの暑い反射光の影響もあったろうし、朝からの胃や頭の工合の効果もあったかもしれないが、とにかくこの車掌の特殊な笑顔を見た時に私の全身の血が一時に頭の方へ駆け上るような気がした。
— 寺田寅彦 『雑記(1)』 青空文庫
痛い痛いと脛を撫でつつ漸くそこに達し、拝殿にも上らず、直ちにその後の丘の上に駆け上ると、ここぞ海抜三千三百三十三尺、高さからいえば富士山の三分の一位のものであるが、人跡余り到らぬ常州第一の深山八溝山の絶頂である。
— 押川春浪 『本州横断 癇癪徒歩旅行』 青空文庫
その脚の地に着くともろともに身を飜えしてどんと突くと、「おッ、」と喚いて、お夏の腕を捻っていたのが手を放して飛退ると、袖が断れたか、とぐいと払って、お夏はいま一人を振放して、つつと月影に姿を消したが、柳の下を潜るが疾いか、溝を超えて、店へ駆け上ると奥へ入った。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
毛があとに残るほどの大きさではなかったが、全体像は僕が今述べた通りに違いなく、また窓掛けを駆け上ることができ、なおかつそいつは肉食である。
— THE CROOKED MAN 『曲れる者』 青空文庫
自分は暖かい煖炉と、海老茶の繻子の刺繍と、安楽椅子と、快活なK君の旅行談を予想して、勇んで、門を入って、階段を駆け上るように敲子をとんとんと打った。
— 夏目漱石 『永日小品』 青空文庫
」 つづいて階段を駆け上る音がし、階段口を睨んでいる主税の眼に、主馬之進の狂気じみた姿が映った。
— 国枝史郎 『仇討姉妹笠』 青空文庫
「そこで吸取紙の方だが、君は何かい、奴が外へ出る、君が二階へ駆け上る、そして一番初めに吸取紙を見たかい」「いゝえ、抽斗やなんか探してからです」「屑籠は見なかったかい」「屑籠と、あゝ、見ました見ました」「その時に封筒はなかったろう」「ありませんでした」 岸本は我ながらあきれたと云う顔をした。
— 甲賀三郎 『支倉事件』 青空文庫
駅のフォームに駆け上ると、急に酔いがぶり返して、ふらふらした。
— 豊島与志雄 『悲しい誤解』 青空文庫