心頼み
こころだのみ
名詞
標準
reliance
文例 · 用例
そこではじめの内は我ともなく鐘の音の聞えるのを心頼みにして、今鳴るか、もう鳴るか、はて時刻はたっぷり経ったものをと、怪しんだが、やがて気が付いて、こういう処じゃ山寺どころではないと思うと、にわかに心細くなった。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
其処ではじめの内は我ともなく鐘の音の聞えるのを心頼みにして、今鳴るか、もう鳴るか、はて時刻はたつぷり経つたものをと、怪しんだが、やがて気が着いて、恁云ふ処ぢや山寺処ではないと思ふと、俄に心細くなつた。
— 泉鏡太郎 『高野聖』 青空文庫
都を西南の方へさすらい出て、こゝの村外れにひと月、かしこの橋下にふた月と、わたくしは旧東京の市区と、大東京とは名のみの郡部とのすれ/\の境界線に沿うて、彼方に多那川の流れを心頼みにしながら南へ移って来たのでした。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
売卜の詞によって縋っている者がその縋っている者を悪いようにはしないという心頼みがあるからであった。
— 田中貢太郎 『賈后と小吏』 青空文庫
しかし、先刻食事の時に聞いた自動車で行ったのなら、新子も汽車に乗り遅れて、駅でマゴマゴしているかもしれない、それがただ一つの心頼みで……。
— 菊池寛 『貞操問答』 青空文庫
――橋の上に、兄弟らしい男の子が、二人遊んでいたので、もしやと心頼みに、茶を一つ、そのよし頼むと、すぐに石段を駈上り縁を廻ったと思えば、十歳ばかりの兄の方が、早く薄べりを縁に敷いた。
— 泉鏡花 『河伯令嬢』 青空文庫
さてこれより金崎へ至らんとするに、来し路を元のところまで返りて行かんもおかしからねばとて、おおよその考えのみを心頼みに、人にさえ逢えば問いただして、おぼつかなくも山添いの小径の草深き中を歩むに、思いもかけぬ草叢より、けたたましき羽音させていと烈しく飛びたつものあり。
— 幸田露伴 『知々夫紀行』 青空文庫
ただ……お兄様がこの手紙を御覧になりましたならば、すべてがスッカリおわかりになりますことと……そればかりを心頼みに致しまして、ようようにここまで認めて来たので御座います。
— 夢野久作 『押絵の奇蹟』 青空文庫