廃気
はいき
名詞
標準
文例 · 用例
それは其の宿屋が、近代式旅館と言ふには少し古風であつたと同時に、かいなでの田舎の旅籠屋とちがつた、古い都会らしい趣味の頽廃気分があつたからで、彼は庭の植込みのあひだを潜つて、飛石づたひに、一棟離れた茶室に案内されたとき、漸と落着場所に有りついたやうな安易を感じた。
— 徳田秋聲 『倒れた花瓶』 青空文庫
各地から新しい職業婦人を輸入して、千束町に代るべき頽廃気分を作るためであった。
— 夢野久作 『東京人の堕落時代』 青空文庫
東京は大和民族の大きな事務所、又は勉強所に過ぎないので、そのほかのものはみんな昔からある頽廃気分の変形したものなのだ。
— 夢野久作 『街頭から見た新東京の裏面』 青空文庫
御簾がかかっており、蜘蛛の巣が張られてあり、畳は、ちゃんと高麗縁がしきつめたままだが、はや一種の廃気が湧いて、このまま置けばフケてしまう。
— 椰子林の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
なおまた、この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥にも我はなりなむ (旅人)というごとき心持ちが天平後期の一つの特徴であって、仏教界にもこの種の頽廃気分が起こり、彫刻において単に肉感的であることを目ざすらしい傾向の現われ始めたことなども、注意する必要はあると思う。
— 和辻哲郎 『日本精神史研究』 青空文庫