家士
かし
名詞
標準
文例 · 用例
幸村は、三つの深手を負ったところへ、この鉄砲組の弾が左の首摺の間に中ったので、既に落馬せんとして、鞍の前輪に取付き差うつむくところを、忠直卿の家士西尾|仁右衛門が鎗で突いたので、幸村はドウと馬から落ちた。
— 菊池寛 『真田幸村』 青空文庫
それは、いかにも町奉行|曲淵甲斐守の家士、得能万兵衛から、明四日千住骨ヶ原にて、手医師何某が腑分をすることを、内報してきた書状だった。
— 菊池寛 『蘭学事始』 青空文庫
利春(只圓翁)の妻は黒田家播磨殿家士、梅津羽左衛門の娘で弘化三年に縁組したが、元治元年十一月に三十五歳で死別したので、明治三年七月、後妻として野中勝良氏の姉イト子と縁組した。
— 夢野久作 『梅津只圓翁伝』 青空文庫
昨夜浜松で騒動を起こし、同志の五十嵐右内を奪い、紀州藩士や井上家の家士と、戦い戦い戦いながら、民弥や菊女や萩丸をも加え、それでも一方の血路をひらき、明暦義党の面々は、一人の落伍者死者も出さず、この郷へ引きあげて来たのであった。
— 国枝史郎 『猫の蚤とり武士』 青空文庫
「突然の推参ながら、たって所望の儀は、さいぜん貴公の家士が稀代の名筆を分捕られたそうな、それを一目拝見が致したい」「容易き儀でござる」 三斎もそれを否まん由はなく、今し甲士が分捕って齎らしたばかりの一巻をとって、政宗の手に置いた。
— 白雲の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
大村藩では、家老大村彦右衛門を大将に、家士の全員、諸村の代官所属の全員、小給、足軽、長柄の者は言うまでもなく、領内の土民に至るまで、武士も土民も十六歳から六十歳までの男を全部召集。
— 長崎チャンポン――九州の巻―― 『安吾の新日本地理』 青空文庫
陸奥国会津四十万石|加藤式部少輔明成の家士、弓削田宮内は若松城の南の方で、突然起った轟音にすわと、押っ取り刀で小屋の外へ飛び出した。
— 長谷川伸 『討たせてやらぬ敵討』 青空文庫
高七万石ほどの諸侯なるが、公辺は養子と称し、壮年にて隠居し家督を伝え、家財、封禄、家士に至るまで三千金にかえて、己は外邸に潜み居るあり。
— 徳富蘇峰 『吉田松陰』 青空文庫