拱
拱
名詞
標準
文例 · 用例
しかすがにのぞみのみにて、拱きて、そがのぞみに圧倒さるる。
— 中原中也 『夏と私』 青空文庫
かゝるをりしも剛直の、さあれゆかしきあきらめよ腕|拱みながら歩み去る。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
作家としての、悪い宿業が、多少でも、美しいものを見せられた時、それをそのまま拱手観賞していることが出来ず、つい腕を伸ばして、べたべた野蛮の油手をしるしてしまうのである。
— 太宰治 『盲人独笑』 青空文庫
僕と向き合つて、眞面目な顏して居る役人らしい先生が居るではないか、僕は唯だがつかりして手を拱ぬいてしまつた。
— 国木田独歩 『湯ヶ原より』 青空文庫
二十四日の晩であった、母から手紙が来て、明二十五日の午後まかり出るから金五円至急に調達せよと申込んで来た時、自分は思わず吐息をついて長火鉢の前に坐ったまま拱手をして首を垂れた。
— 国木田独歩 『酒中日記』 青空文庫
悪々しい皮肉を聞かされて、グッと行きづまって了い、手を拱んだまま暫時は頭も得あげず、涙をほろほろこぼしていたが、「母上さん、それは余りで御座います」とようように一言、母は何所までも上手、「何が余だね、それは此方の文句だよ。
— 国木田独歩 『酒中日記』 青空文庫
早瀬はしばらく黙ったが、思わず拱いていた腕に解くと、背後ざまに机に肱、片手をしかと膝に支いて、「貰うさ。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」「…………」「夫人、」「…………」 十四 少時――主税ももう口を利こうとは思わない様子になって、別に苦にする顔色でもないが、腕を拱いた態で、夫人の一足後れに跟いて行く。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫