輾
てん
名詞
標準
文例 · 用例
壁から忍び笑いの声が聞えて来て、深夜、床の中で輾転しているのです。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
十時頃まで床のなかで轉輾してから、私はめそめそ泣き出して起き上る。
— 太宰治 『思ひ出』 青空文庫
全く無益な、路傍の苦労ばかり、それも自ら求めて十年間、転輾して来たということである。
— 太宰治 『困惑の弁』 青空文庫
慚愧、後悔の念に文字どおり転輾する。
— 太宰治 『酒ぎらい』 青空文庫
あたりを見たる眼配は、深夜時計の輾る時、病室に患者を護りて、油断せざるに異ならざりき。
— 泉鏡花 『海城発電』 青空文庫
以来、十春秋、日夜転輾、鞭影キミヲ尅シ、九狂一拝ノ精進、師ノ御懸念一掃ノオ仕事シテ居ラレルナラバ、私、何ヲ言オウ、声高ク、「アリガトウ」ト明朗、粛然ノ謝辞ノミ。
— 太宰治 『創生記』 青空文庫
けれども、一夜、転輾、わが胸の奥底ふかく秘め置きし、かの、それでもやっと一つ残し得たかなしい自矜、若きいのち破るとも孤城、まもり抜きますとバイロン卿に誓った掟、苦しき手錠、重い鉄鎖、いま豁然一笑、投げ捨てた。
— 太宰治 『創生記』 青空文庫
私はいつでも口ごもり、ひどく誤解されて、たいてい負けて、そうして深夜ひとり寝床の中で、ああ、あの時にはこう言いかえしてやればよかった、しまった、あの時、颯っと帰って来ればよかった、しまった、と後悔ほぞを噛む思いに眠れず転輾している有様なのだから、偉いどころか、最劣敗者とでもいうようなところだ。
— 太宰治 『鉄面皮』 青空文庫