菲薄
ひはく
名詞
標準
文例 · 用例
「いよ/\となれば――」 創作家であるべき自分の胸の底には、斯ほどにも菲薄な望みが、動物的な眼を視張つてゐたのだ。
— 牧野信一 『冬の風鈴』 青空文庫
そして、そんな場合には、終ひには知らず識らず走る、己れの菲薄性を宿命的に踏みつけるやうな妄想に駆られて、極めて漠然と業を煮やすのであつた。
— 牧野信一 『蔭ひなた』 青空文庫
近年、世情ようやく澆季に移り、人心ようやく菲薄に流れ、国体まさにその神聖を減じ、忠孝まさにその活気を失わんとするに当たり、広くこの理を開示するは、ひとり真理のために要するのみならず、実に国家の急務とするところなり。
— 緒言 『妖怪学講義』 青空文庫
すなわちこの実の藍色なのは単にその実の表皮だけであって、その表皮は極めて菲薄な膜質で何の色汁も含んでいない。
— 牧野富太郎 『植物記』 青空文庫
退廃彫刻の中には至る所で植生が菲薄化し、郊外生活を営む古きものどもが減少している徴候が示されていた。
— H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft 『狂気の山脈にて』 青空文庫
天、いやしくもわが区々の悃誠を諒したまはば、幕吏かならずわが説を是とせんと志を立てたれども、「蚊※山を負ふ」の喩、つひに事をなすことあたはず今日に至る、またわが徳の菲薄なるによれば、いま将た誰れをか尤め、かつ怨まんや。
— 吉田松陰 『留魂録』 青空文庫
誠に宜しく聖聴を開張し、以て先帝の遺徳をあきらかにし、志士の気を恢弘すべし、宜しくみだりに自ら菲薄し、喩をひき義をうしない、以て忠諫の道を塞ぐべからず―― 冒頭まず忠肝をしぼって幼帝にこう訓えているのであった。
— 出師の巻 『三国志』 青空文庫