菠薐
ほうれん
名詞
標準
文例 · 用例
ぞんざいに黒い裏を見せて引くり返っているのを、白い指でちょいと直し、素足に引懸け、がたり腰障子を左へ開けると、十時過ぎの太陽が、向うの井戸端の、柳の上から斜っかけに、遍く射込んで、俎の上に揃えた、菠薐草の根を、紅に照らしたばかり。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」「へッ、」 と一ツ胸でしゃくって笑いながら、盤台を下ろして、天秤を立掛ける時、菠薐草を揃えている、お源の背を上から見て、「相かわらず大な尻だぜ、台所充満だ。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
卵のかげにパセリの青草、その傍に、ハムの赤い珊瑚礁がちらと顔を出していて、キャベツの黄色い葉は、牡丹の花瓣のように、鳥の羽の扇子のようにお皿に敷かれて、緑したたる菠薐草は、牧場か湖水か。
— 太宰治 『女生徒』 青空文庫
その顔は菠薐の葉の緑だ。
— 岡本かの子 『街頭』 青空文庫
…… 綴蓋の女房が狹い臺所で、總菜の菠薐草を揃へながら、「また鼻が鳴りますね……澤山然うなさい、中屋の小僧に遣つ了ふから……」「眞平御免。
— 泉鏡太郎 『大阪まで』 青空文庫
駿介は菠薐草の束を風呂敷に包んで下げてゐた。
— 島木健作 『續生活の探求』 青空文庫
それは非常によく出來た菠薐草で、駿介自身の丹誠に成るものであつた。
— 島木健作 『續生活の探求』 青空文庫
何か手土産を持つて行きたいと思つた駿介は、咄嗟のこととて何も考へつかず、拔いて來て土間の隅においた菠薐草を泥のついたまま下げて來たのであつた。
— 島木健作 『續生活の探求』 青空文庫