なし
なし
名詞
標準
文例 · 用例
生まれが生まれだけにどことなし、人柄なところがあって、さびしい面ざしがいっそうあわれに見える。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
「ねいあなたちょっと抱いてやってくださいな、ほんのすこし、ねいあなたちょっと」 細君から手移しに押しつけられて、糟谷はしょうことなしに笑って、しょうことなしに芳輔を抱いた。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
まず第一に長女の髪をゆう、何がよかろうという事、髪はできぬという、祖母に相談する、何とかいう事に極って出来あがった、それから次なはお下げにゆう、仲なは何、末なは何にて各注文がある、これもまた一騒ぎである、予は奥に新聞を視ている、仲なと末なが、かわるがわる、ひききりなしにやってくる。
— 伊藤左千夫 『浅草詣』 青空文庫
そうして又、俄の出来事に無数の悪魔が駈出して来た様な、にくにくしい土色した雲が、空低く散らかり飛び駈けって、引切りなしに北の方へ走り行く。
— 伊藤左千夫 『大雨の前日』 青空文庫
予はしょうことなしに、新聞の記事をよい加減に読み聞かして、これだからそんなに心配しなくともえい、と賺した。
— 伊藤左千夫 『大雨の前日』 青空文庫
思うに偉人は自覚的成功なし、活動に起り活動に終るは偉人の常なるがごとく、古今東西の偉人多くはしかるを見る、豊公の如き奈翁の如き、彼らは活動を知って満足を知らざるに似たり、偉人の成功は活動にして偉人の満足又活動に存するか。
— 正岡先生論 『絶対的人格』 青空文庫
そこで誰に教わるとなしに覚えた黐の製造をやる。
— 伊藤左千夫 『井戸』 青空文庫
只自身家庭趣味の経験に乏しく、或は陋劣なる家庭にありながら、徒らに口の先、筆の先にて空想的家庭を説くは、射利の用に供せらるる以外には、何等の意義なしと云ってよかろう。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫