横雲
よこぐも
名詞
標準
wall of clouds
文例 · 用例
四方見廻す限り陸地の影も見えぬ、ただ水平線上に幾筋かの横雲が静かに横たわっていると想像する。
— 寺田寅彦 『宇宙の二大星流』 青空文庫
故人がよみつる歌の事などさま/″\胸に迫りて、ほと/\涙もこぼれつべく、ゆかしさのいと堪へがたければ、閨の戸おして大空を打見あぐるに、月には横雲少しかゝりて、見わたす岡の若葉のかげ暗う、過ぎゆきけんかげも見えぬなん、いと口惜しうもゆかしうも唯身にしみて打ながめられき。
— 樋口一葉 『すゞろごと』 青空文庫
そのとき青く二十日の月が黒い横雲の上からしずかにのぼってきました。
— 宮沢賢治 『ポラーノの広場』 青空文庫
五日の月が、西の山脈の上の黒い横雲から、もう一ぺん顔を出して、山に沈む前のほんのしばらくを、鈍い鉛のような光で、そこらをいっぱいにしました。
— 宮沢賢治 『シグナルとシグナレス』 青空文庫
……即ち風の聲、浪の音、流の響、故郷を思ひ、先祖代々を思ひ、唯女房を偲ぶべき夜半の音信さへ、窓のささんざ、松風の濱松を過ぎ、豐橋を越すや、時やゝ經るに從つて、横雲の空一文字、山かづら、霞の二字、雲も三色に明初めて、十人十色に目を覺す。
— 泉鏡太郎 『大阪まで』 青空文庫
」と銃猟家が、怒りだちに立った時は、もう横雲がたなびいて、湖の面がほんのりと青ずんだ。
— 泉鏡花 『鷭狩』 青空文庫
大魔の袖や帆となりけん、美女は船の几帳にかくれて、(ここはどこの細道じゃ、 細道じゃ、 天神様の細道じゃ、 細道じゃ、 少し通して下さんせ……) 最切めて懐しく聞ゆ、とすれば、樹立の茂に哄と風、木の葉、緑の瀬を早み……横雲が、あの、横雲が。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
天井に近く長い二流三流の煙の横雲が、草臥れた乳色になって、動く力を失っている。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫