擦合
擦合
名詞
標準
文例 · 用例
袖が擦合うたまま、夫人がまだ取られぬのを、離すと落ちるし、そうかと云って、手はかけているから……引込めもならず……提げていると……手巾が隔てになった袖が触れそうだったので、二人が斉しく左右を見た。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 城を語る時、初阪の色酔えるがごとく、土地|馴れぬ足許は、ふらつくばかり危まれたが、対手が、しゃんと来いの男衆だけ、確に引受けられた酔漢に似て、擦合い、行違う人の中を、傍目も触らず饒舌るのであった。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
」と肩を擦合はせて居る細君を呼んだ。
— 泉鏡花 『山の手小景』 青空文庫
冴かなる眼にキトわれを見しが、互に肩を擦合せて小走りに入るよとせしに、つかつかと引返して、冷たき衣の袖もてわが頸を抱くや否や、アと叫ぶ頬をしたたかに吸いぬ。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
――吃驚したですだ、お前ん……ただ居りゃ袖も擦合うけれども、手を出すと、富士の山の天辺あたりまで、スーと雲で退かれたで、あっと云うと俺、尻餅を搗いたですが。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
御迷惑か存ぜぬが、靄の袖の擦合うた御縁とて、ぴつたり胸に當る事がありましたにより、お心着け申上げます……お聞入れ、お取棄て、ともお心次第。
— 泉鏡太郎 『三人の盲の話』 青空文庫
毎夜の如く、内井戸の釣瓶の、人手を借らず鳴つたのも聞く…… 轆轤が軋んで、ギイと云ふと、キリ/\と二つばかり井戸繩の擦合ふ音して、少須して、トンと幽かに水に響く。
— 泉鏡太郎 『霰ふる』 青空文庫
中央の木目から渦いて出るのが、池の小波のひた/\と寄する音の中に、隣の納屋の石を切る響に交つて、繁つた葉と葉が擦合ふやうで、たとへば時雨の降るやうで、又無數の山蟻が谷の中を歩行く跫音のやうである。
— 泉鏡花 『三尺角』 青空文庫