小壁
こかべ
名詞
標準
文例 · 用例
こはおん身の像を寫せる小壁頭より墮ち來りしなり。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
一六七六年巴里版タヴエルニエーの波斯紀行一卷六一六頁に盜人の體を四つの小壁で詰め頭だけ出してお慈悲に煙草をやり死ぬ迄すて置く、其切願のまゝ通行人が首を刎ねやるを禁ず、又罪人を裸で立たせ四つの壁で圍ひ頭から漆喰ひを流しかけ堅まる儘に息も泣くこともできず惱死せしむと。
— 南方熊楠 『人柱の話』 青空文庫
大震災のあと間もないときで、佃が崩れた小壁に紙をはって働いていた。
— 宮本百合子 『二つの庭』 青空文庫
「やあ、これはめずらしい」 その室の小壁のでっぱりで、ドアからかくされている寝台の上で野沢義二が起きあがった。
— 宮本百合子 『道標』 青空文庫
同じ退屈するなら、やはり蒲團の中にもぐり込んでゐるか、地震で柱の歪んだ部屋の黄色い壁――附鴨居の下の天井下の小壁などにひどいひゞを見せた壁に向つて、煙草の煙でも吹いてゐた方が、まだしもましぢやないか知ら?
— 葛西善藏 『蠢く者』 青空文庫
わっしは片づけながら、ミトレイが今くるかくるかと待っておるうちに、入り口の部屋のドアの傍で、小壁のかげの片隅に、ふいとこの箱を踏んづけましたんで。
— フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー 『罪と罰』 青空文庫
東の隅の小壁に描かれた菩薩の、手にしている蓮華に見入っていると、それがなんだか薔薇の花かなんぞのような、幻覚さえおこって来そうになるほどだ。
— 堀辰雄 『大和路・信濃路』 青空文庫
この鳥たちは礼拝堂に入りこんで、小壁や、垂飾りに巣をつくっているのだが、これは、ここが人影まれで寂しいことのしるしでもある。
— ワシントン・アーヴィング Washington Irving 『ウェストミンスター寺院』 青空文庫