来紅
らいこう
名詞
標準
文例 · 用例
「雁来紅」という奇妙な映画で、台湾の物産会社の東京支店の支配人が、上京した社長をこれから迎えるというので事務室で事務成績報告の予行演習をやるところがある。
— 寺田寅彦 『映画雑感(4)』 青空文庫
床の間に、雁来紅を活けたのが、暗く見えて、掛軸に白の野菊……蝶が一羽。
— 泉鏡花 『菊あわせ』 青空文庫
莞爾とその時、女が笑った唇が、縹色に真青に見えて、目の前へ――あの近頃の友染向にはありましょう、雁来紅を肩から染めた――釣り下げた長襦袢の、宙にふらふらとかかった、その真中へ、ぬっと、障子一杯の大きな顔になって、私の胸へ、雪の釣鐘ほどの重さが柔々と、ずしん!
— 泉鏡花 『菊あわせ』 青空文庫
石鹸の泡に似て小さく、簇り青むある花はひと日|浴みし肺病の女の肌を忍ぶごとく、洋妾めける雁来紅は吸ひさしの巻煙草めきちらぼひてしみらに薫ゆる朝顔の萎みてちりし日かげをば見て見ぬごとし。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
雁来紅に留れば雁来紅が映る。
— 北原白秋 『とんぼの眼玉』 青空文庫
狭い庭にはゆうべの雨のあとが乾かないで、白と薄むらさきと柿色とをまぜ栽えにした朝顔ふた鉢と、まだ葉の伸びない雁来紅の一と鉢とが、つい鼻さきに生き生きと美しく湿れていた。
— 雷獣と蛇 『半七捕物帳』 青空文庫
私はその下宿を「雁来紅の家」と自分ひとりで呼んでいた。
— 三木清 『読書遍歴』 青空文庫
それから以来紅葉の真蹟は益々持てはやされて今では短冊一枚が三十円以上を値いしてるそうだ。
— ――尾崎紅葉―― 『硯友社の勃興と道程』 青空文庫