水涸れ
みずがれ
名詞
標準
文例 · 用例
一同は杖に倚って、水涸れの富士川を瞰下しながら、しばらく息を吐く。
— 小島烏水 『雪中富士登山記』 青空文庫
附近一帯の水涸れで、工面のいい家は、どん/\井戸を掘り下げたり、水道を引いたりして、文字通り「涼しい顔」をしてゐられるのであるが、この埃の溜つた井戸の使用者は借家人であり、その家主は、前代は財布の紐で首でも吊つたんではないか、と疑はざるを得ない吝ん坊なのである。
— 葉山嘉樹 『井戸の底に埃の溜つた話』 青空文庫
……池は、樹の根に樋を伏せて裏の川から引くのだが、一年に一二度ずつ水涸れがあって、池の水が干ようとする。
— 泉鏡花 『眉かくしの霊』 青空文庫
巌石、がらがらの細谿川が、寒さに水涸れして、さらさらさらさら、……ああ、ちょうど、あの音、……洗面所の、あの音でございます。
— 泉鏡花 『眉かくしの霊』 青空文庫
わが熱き炎の都、都なる煉瓦の沙漠、沙漠なる硫黄の海の広小路、そのただなかに、饑ゑにたるトリイトン神の立像、水涸れ果てし噴水の大水盤の繞には、白琺瑯の石の級ただ照り渇き痺れたる。
— 北原白秋 『第二邪宗門』 青空文庫
日光の直射を恐れて羽蟻は飛びめぐり、溝渠には水涸れて悪臭を放ち、病犬は朝鮮|薊の紫の刺に後退りつつ咆え廻り、蛙は蒼白い腹を仰向けて死に、泥臭い鮒のあたまは苦しそうに泡を立てはじめる。
— 北原白秋 『水郷柳河』 青空文庫
水涸れて水饑饉のいたましさ。
— 種田山頭火 『其中日記』 青空文庫
水涸れの橋を渡り、観音坂と建札の立った杉並木の坂を登る。
— 田中英光 『箱根の山』 青空文庫