油染み
あぶらじみ
名詞
標準
文例 · 用例
ですから、病院へ入ったあとで、針箱の抽斗にも、畳紙の中にも、皺になった千代紙一枚もなく……油染みた手柄|一掛もなかったんですって。
— 泉鏡花 『陽炎座』 青空文庫
そしてお八重は、其奧樣のお好みで結はせられたと言つて、生れて初めての庇髮に結つてゐて、奧樣から拜領の、少し油染みた焦橄欖のリボンを大事相に挿してゐた。
— 石川啄木 『天鵞絨』 青空文庫
そしてお八重は、其奥様のお好みで結はせられたと言つて、生れて初めての廂髪に結つてゐて、奥様から拝領の、少し油染みた、焦橄欖のリボンを大事相に※してゐた。
— 石川啄木 『天鵞絨』 青空文庫
これは布の様子と油染みた所とから見ると、水夫が辮髪を縛る紐らしい。
— THE MURDERS IN THE RUE MORGUE 『病院横町の殺人犯』 青空文庫
丁度お牧の父親も家に居る時で、例の油染みた髮結の道具などが爐邊に置いてあつたかと覺えて居ます。
— 島崎藤村 『幼き日』 青空文庫
」 ずいと通った藤吉、見廻すまでもなく一間きりの部屋に、油染みた煎餅蒲団を被って与惣次が寝ている。
— 槍祭夏の夜話 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
お仕着せの松坂木綿の袷、紺の前掛が油染みて、伸び切つた手足のヌツと出るのも淺ましい姿ですが、その代り八五郎に頼まれれば、板敷の縁側に默つて一刻も坐つて居ようと言つた人柄です。
— 二人娘 『錢形平次捕物控』 青空文庫
壁には、三座の絵番付やら、素人浄瑠璃のビラなどが、辻便所ほど貼りつけてあって、そのまえに、油染みた桐の櫛箱や、鬢だらいなどをすえつけて、今、一人の客の髪を結い上げているのが、親方の仁吉らしかった。
— 吉川英治 『治郎吉格子』 青空文庫