異国的
いこくてき
名詞
標準
文例 · 用例
かの女の前身は外人相手の娼婦なので、魑魅子には東洋の古典の絵巻にあるような繊細なこころは、あいにく持っていなかったが、女取引所にあらわれる体温によって花咲いた男性の手管を、侵略に委せて刺青した、肉体的異国的な地図と感情を失ったエモーションの波、そこに愛情の新らしい鋳型を僕は見出すのだ。
— 吉行エイスケ 『東京ロマンティック恋愛記』 青空文庫
」 さうして、小川博士は、大和朝廷の大官たちが、しばしば蝦夷、東人、毛人などと名乗つたのは、一つには、奥羽地方人の勇猛、またはその異国的なハイカラな情緒にあやかりたいといふ意味もあつたのではなからうかと考へてみるのも面白いではないか、といふやうな事も言ひ添へてゐる。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
こんな些細な事でも自分の異国的情調を高めるに充分であった。
— 寺田寅彦 『旅日記から(明治四十二年)』 青空文庫
しかし異国的なゴムの葉のにおいばかりは、少なくも当時の自分の連想の世界を超越した不思議な魔界の悪臭であった。
— 寺田寅彦 『試験管』 青空文庫
沖の端の写真を見る人は柳、栴檀、石榴、櫨などのかげに、而も街の真中を人工的水路の、水もひたひたと白く光つては芍薬の根を洗ひ洗濯女の手に波紋を画く夏の真昼の光景に一種のある異国的情緒の微漾を感ずるであらう。
— 北原白秋 『水郷柳河』 青空文庫
彼の「異国的な美」に対する愛好は前からよく知ってはいたけれども、此の場合の彼の感動には多くの誇張が含まれていることを私は見出し、そして、その誇張を挫いてやろうと考えた。
— 中島敦 『虎狩』 青空文庫
そういう異国的な酒場の風景が、中学生の三造にはたまらない魅力であった。
— 中島敦 『プウルの傍で』 青空文庫
と眼をあげた刹那、映じた風景は、むろん異国的ではありながら、その癖、未生前とでもいいますか、どこかで一回は眺めたことがあるという感懐が、肉体を痺れさせるほど、強くおそいました。
— 田中英光 『オリンポスの果実』 青空文庫