雇婆
やといばあ
名詞
標準
文例 · 用例
小鍋立というと洒落に見えるが、何、無精たらしい雇婆さんの突掛けの膳で、安ものの中皿に、葱と菎蒻ばかりが、堆く、狩野派末法の山水を見せると、傍に竹の皮の突張った、牛の並肉の朱く溢出た処は、未来派尖鋭の動物を思わせる。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
相原の妻の横死は、夫が他に情婦を作った為だという噂もあったが、その後十四年の長い間、相原は白痴の与助と雇婆とたった三人のさびしい生活をつづけているのを見ると、それは一種の想像説に過ぎないらしかった。
— 岡本綺堂 『探偵夜話』 青空文庫
今夜は雇婆が風邪をひいて寝ているので、かれは父の寝酒を買うために町まで暗い夜路を走って行ったのであることを、倉部巡査は後に知った。
— 岡本綺堂 『探偵夜話』 青空文庫
主人の相原健吉と雇婆のお百とは何者にか惨殺されて、座敷のなかに枕をならべて倒れていて、与助は二つの死骸のまん中に坐って唯ぼんやりと眼をみはっているばかり。
— 岡本綺堂 『探偵夜話』 青空文庫
それでも与助や雇婆のお百はうすうす承知していたらしく、与助はともかくも、お百はおそらく口留めされていたのでしょう。
— 岡本綺堂 『探偵夜話』 青空文庫
その結果がこの怖ろしい悲劇の動機となって、相原医師に相当の蓄財のあること知っている五兵衛は、雨のふる晩に手斧を持って相原家へ忍び込み、主人と雇婆を惨殺したのです。
— 岡本綺堂 『探偵夜話』 青空文庫
主人と雇婆とを殺して、それから金のありかを探そうとするところへ、ちょうど与助が酒を買って帰って来たので、ついでに殺してしまおうかと思って手斧をふりあげると、与助が怖い眼をして睨んだそうです。
— 岡本綺堂 『探偵夜話』 青空文庫
人の許諾を経ずして吾妻橋事件などを至る処に振り廻わす以上は、人の軒下に犬を忍ばして、その報道を得々として逢う人に吹聴する以上は、車夫、馬丁、無頼漢、ごろつき書生、日雇婆、産婆、妖婆、按摩、頓馬に至るまでを使用して国家有用の材に煩を及ぼして顧みざる以上は――猫にも覚悟がある。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫