鉄鏡
てっきょう
名詞
標準
文例 · 用例
女は領を延ばして盾に描ける模様を確と見分けようとする体であったが、かの騎士は何の会釈もなくこの鉄鏡を突き破って通り抜ける勢で、いよいよ目の前に近づいた時、女は思わず梭を抛げて、鏡に向って高くランスロットと叫んだ。
— 夏目漱石 『薤露行』 青空文庫
それは、お岩の変貌を写す鏡で、今どきとうてい見ることのできない、古風な長柄の鉄鏡だった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
「ところで、こういう昔の鉄鏡に、一種不思議な現象があるのを、御存知でしょうか。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
青い空は一つの海のような工合で、そこにいささか見える浮雲は、さながら筆洗の中で白筆を洗ったように棚曳き、冴え渡った月は陳士成に向って冷やかな波を灌ぎかけ、初めはただ新に磨いた一面の鉄鏡に過ぎなかったが、この鏡はかえって正体の知れぬ陳士成の全身を透きとおして、彼の身体の上に鉄の月明を映じた。
— 魯迅 『白光』 青空文庫