雑沓
ざっとう
名詞
標準
文例 · 用例
だがたいていの場合は、市中の賑やかな雑沓の中を歩いている。
— 萩原朔太郎 『秋と漫歩』 青空文庫
碑文谷、武蔵|小山、戸越銀座など、見たことも聞いたこともない名前の町が、広漠たる野原の真中に実在して、夢に見る竜宮城のように雑沓している。
— 萩原朔太郎 『秋と漫歩』 青空文庫
僕もまたそのやうに、都会の雑沓の中をうろついたり、反響もない読者を相手にして、用にも立たぬ独語などをしやべつて居る。
— 萩原朔太郎 『僕の孤独癖について』 青空文庫
そして尚ボードレエルの言うように、僕もまたそのように、都会の雑沓の中をうろついたり、反響もない読者を相手にして、用にも立たぬ独語などをしゃべって居る。
— 萩原朔太郎 『僕の孤独癖について』 青空文庫
さいごに三越にはいり、薬品部に行き、店の雑沓ゆえに少し大胆になり、大箱を二つ求めた。
— 太宰治 『姥捨』 青空文庫
妾は恐ろしい雑沓の中で、不吉な予感をその時感じたのです。
— 吉行エイスケ 『バルザックの寝巻姿』 青空文庫
五 八月の末だった、その日、俊吉は一人、向島の百花園に行った帰途、三囲のあたりから土手へ颯と雲が懸って、大川が白くなったので、仲見世前まで腕車で来て、あれから電車に乗ろうとしたが、いつもの雑沓。
— 泉鏡花 『第二菎蒻本』 青空文庫
自動車が浅草の雑沓のなかにまぎれこみ、私たちもただの人の気楽さをようやく感じて来たころ、馬場はまじめに呟いた。
— 太宰治 『ダス・ゲマイネ』 青空文庫