消し手
けして
名詞
標準
文例 · 用例
降りやまぬ雪の下にはまだ炎々と民家が焼けているのだが消し手はなく、ただ戦勝の驕りに燃えた顔の狂奔と、降参兵の大群が、諸所に茫然と給与の粥を待ってたたずんでいるほか、折々、前線からの騎馬が泥土を飛ばしてその夜の本陣の森へ入って行くのが見られるだけで、いつか十四日の朝は来ていた。
— 風花帖 『私本太平記』 青空文庫
洛中は早や死の街に似、どこか戦線の綻びから潜入した西国兵が、町屋の裏にひそんで火をつけ出したのが消し手もなく燃えひろがり、煙は二条内裏へも忍び入って、いつにない早い黄昏れが御所一円をおおい出していたのであった。
— 風花帖 『私本太平記』 青空文庫