蜘蛛糸
くもいと
名詞
標準
文例 · 用例
強靱な、ピラミッド型の根が幹を支えているうちに、幹は枯れ、地上に落ちたその残骸は、まるで谿いっぱいにもつれた蜘蛛糸をみるようであった。
— 有尾人 『人外魔境』 青空文庫
創傷を中心に細い朱線を引いて、蜘蛛糸のような裂罅が縫合部を蜒り走っているが、何れも左右の楔状骨に迄達している。
— 小栗虫太郎 『後光殺人事件』 青空文庫
今入った板戸の上の長押には、土蜘蛛に扮した梅幸の大羽子板が掲っていて、振り上げた押絵の右手からは、十本程の銀色の蜘蛛糸が斜に扇形となって拡がって行き、末端を横手の円い柱時計の下にある、格子窓の裾に結び付けてあった。
— 小栗虫太郎 『後光殺人事件』 青空文庫
それに、これは去年の暮私が頼まれて作ったのですが、蜘蛛糸は本物の小道具なんですよ」「すると、君は背景描きをやっているのかい」そう云って法水が端の一本を摘むと、それは、紙芯に銀紙を被せた柔かい紐だった。
— 小栗虫太郎 『後光殺人事件』 青空文庫
蓄音機は前以って、扇形に張ってある蜘蛛糸の下へ、適宜な位置で据えてあったのだが、それにも細工がある。
— 小栗虫太郎 『後光殺人事件』 青空文庫
そうして、回転が始まると、発音器の針受が上の蜘蛛糸を弾いて、あの時計に似た沈んだ音響を立てたのだよ。
— 小栗虫太郎 『後光殺人事件』 青空文庫
僕はあの蜘蛛糸を見た時、此れなら不在証明を作れると直感したのだ。
— 小栗虫太郎 『後光殺人事件』 青空文庫
すると、蜘蛛糸のような一条の光線が隙間から洩れて、それが蚊帳を透し、皺ばった頬のうえに落ちた。
— 小栗虫太郎 『白蟻』 青空文庫