櫛笥
くしげ
名詞
標準
toiletries case
文例 · 用例
折々の空の瑠璃色は、玲瓏たる影と成りて、玉章の手函の裡、櫛笥の奧、紅猪口の底にも宿る。
— 泉鏡太郎 『五月より』 青空文庫
日本にも、櫛笥殿北山大原の領地で銃もて大牝猴を覘うに、猴腹を示し合掌せしにかかわらず打ち殺し、その祟りで煩い死んだと伝う(『新著聞集』報仇篇)。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
貝姫は櫛笥左中将隆致の女で、後西院天皇の生母|御匣局の妹である。
— 森鴎外 『椙原品』 青空文庫
ふたかたに言ひもてゆけば玉櫛笥わがみはなれぬかけごなりけり と老人の慄えた字でお書きになったのを、ちょうど源氏も玉鬘のほうにいて、いろいろな式のことの指図をしていた時であったから拝見した。
— 行幸 『源氏物語』 青空文庫
おかしいほど慄えている」 と言って、何度も源氏は読み返しながら、「よくもこんなに玉櫛笥にとらわれた歌が詠めたものだ。
— 行幸 『源氏物語』 青空文庫
私はすぐ石川の女郎の 志可の海人は布刈り塩焼き暇なみ櫛笥の小櫛取りも見なくに を思ひ出した。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
暑き草いきれにきりぎりす啼き、ハモニカを近所の下宿にて吹くは憂たてけれども、我が油じみし櫛笥の底をかき探れば、陸奥紙に包みし細身の剃刀こそ出づるなれ。
— 與謝野晶子 『晶子詩篇全集』 青空文庫
大唐以來大師の爲に櫛笥をとり、湯殿の流しに仕へましたとかで、入滅の後も、この聖たちよりほかに、與らせぬ行事も間々御座います。
— 折口信夫 『死者の書 續篇(草稿)』 青空文庫