桔
桔
名詞
標準
文例 · 用例
遥に北へ行くと、白馬岳が聳えている、雪の室は花の色の鮮やかな高山植物を秘めて、千島|桔梗、千島|甘菜、得撫草、色丹草など、帝国極北の地に生える美しいのが、錦の如く咲くのもこの山で、雪が白馬の奔る形をあらわすからその名を得たということである。
— 小島烏水 『梓川の上流』 青空文庫
これらの山々から瞰下されて、乾き切っている桔梗ヶ原一帯は、黒水晶の葡萄がみのる野というよりも、橇でも挽かせて、砂と埃と灰の上を、駈けずって見たくなった。
— 小島烏水 『谷より峰へ峰より谷へ』 青空文庫
瑠璃色の松虫草と、大原の水分を一杯に吸い込んで、ふくらんだような桔梗のつぼみからは、秋が立ち初めている。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
糸の如くに降りしきる雨の中にたたずんで、モミや落葉松の美しい木立に見とれる、この辺から、裾野式の高原を展開して、桔梗がさき、萩がさき、女郎花がひょろひょろと露けく、キスゲが洞燈のような、明かる味をさしている。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
桔梗色に濃かった木曽御嶽の頭に、朝光が這うと微明として、半熱半冷、半紅半紫を混ぜて刷く、自分は思った、宇宙間、山を待ってはじめて啓示される秘色はこれであると、噫、何ぞ紫の筑波を説かん。
— 小島烏水 『奥常念岳の絶巓に立つ記』 青空文庫
桔梗と女郎花の一面に咲いている原で一しお淋しく思いました。
— 太宰治 『散華』 青空文庫
それから、女郎花、われもこう、桔梗、かるかや、芒。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
Kはバスの下で、雨にたたかれた桔梗の花のように美しく伏していた。
— 太宰治 『秋風記』 青空文庫