秘め置く
ひめおく
動詞
標準
文例 · 用例
葛籠に秘め置く、守刀をキラリと引抜くまで、襖の蔭から見定めて、(ああ、しばらく、) と留めたは、さて、殺しては相済まぬ。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
粮と温石と凍餓共に救う、万全の策だったのである、けれども、いやしくも文学者たるべきものの、紅玉、緑宝玉、宝玉を秘め置くべき胸から、黄色に焦げた香を放って、手を懐中に暖めたとあっては、蕎麦屋の、もり二杯の小婢の、ぼろ前垂の下に手首を突込むのと軌を一にする、と云って斥けた。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
さてわれにも要なき品なれば貴嬢に送り返すべきなれど思う節あればしばしわが手もとに秘め置く事といたしぬ。
— 国木田独歩 『おとずれ』 青空文庫
神職 秘しがくしに秘め置くべき、この呪詛の形代を(藁人形を示す)言わば軽々しう身につけおったは――別に、恐多い神木に打込んだのが、森の中にまだ他にもあるからじゃろ。
— 泉鏡花 『多神教』 青空文庫
妾の容子の常になく包ましげなるに、顔色さえ悪しかりしを、親しめる女囚に怪しまれて、しばしば問われて、秘めおくによしなく、遂に事|云々と告げけるに、彼女の驚きはなかなか妾にも勝りたりき。
— 福田英子 『妾の半生涯』 青空文庫