睥
睥
名詞
標準
文例 · 用例
風貌も、その時はちゃんとネクタイをしておられたし、飄々などという仙人じみた印象は微塵も無く、お顔は黒く骨張って謹直な感じで、鉄縁の眼鏡の奥のお眼は油断なく四方を睥睨し、なつかしいどころか、私にはどの先生よりも手剛いお方のように見受けられた。
— 太宰治 『惜別』 青空文庫
彼処に敵あるがごとく、腕を挙げて睥睨す。
— 泉鏡花 『紅玉』 青空文庫
正常な教養を持つ世間の知識階級に対し、脅威を感ずるが故に、睥睨しようとする職人上りで頭が高い壮年者と青年は自らの孤独な階級に立籠って脅威し来るものを罵る快を貪るには一あって二無き相手だった。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
」などと思わせぶりな前提で麻川氏を誇張的に讃美し自分も麻川氏の客であるからには、天下の存在であるかのような口吻を洩らして私に堪らなく気障な思いをさせ、また相当|曰くつきらしい女客達が麻川氏を囲んで大柄に坐りこみ、麻川氏の座敷から廊下や庭を往き来する人達を睥睨するのも愉快では無い。
— 岡本かの子 『鶴は病みき』 青空文庫
月光を線に延ばして奇怪な形に編み上げたようなアームチェーアや現代機械の臓腑の模型がグロテスクな物体となって睥睨し嘲笑し、旧様式美に対する新様式の反逆を直截簡明に宣言している一群の進撃隊のようだ。
— 岡本かの子 『バットクラス』 青空文庫
富士のように群峯を睥睨して聳え立とう。
— 岡本かの子 『宝永噴火』 青空文庫
船橋の上にはビール樽のやうに肥滿した船長が、赤き頬髯を捻りつゝ傲然と四|方を睥睨して居る。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
况んや此海底戰鬪艇は、波威に沈降する事三十|呎乃至五十|呎、其潜行を持續し得る時間は無制限であるから、一度此軍艇に睥睨まれたる軍艦は、恰も昔物語の亞剌比亞の沙漠の大魔神に魅られたる綿羊のごとく、遁れんとして遁るゝ能はず、鬪はんか、速射砲もガツトリング砲も到底力及ばぬ海底の此大怪物を奈何せん。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫