薬一
くすりいち
名詞
標準
文例 · 用例
この冬に肺を病んでから薬一滴飲むことすらできず、土方にせよ、立ちん坊にせよ、それを休めばすぐ食うことができないのであった。
— 国木田独歩 『窮死』 青空文庫
別に、風邪薬を一|貼、凍傷の膏薬一貝買ひに行つた話は聞かぬが、春の曙、秋の暮、夕顔の咲けるほど、炉の榾の消ゆる時、夜中にフト目の覚むる折など、町中を籠めて芬々と香ふ、湿ぽい風は薬屋の気勢なので。
— 泉鏡花 『処方秘箋』 青空文庫
それは三日目には、もう私たちの全部が、寝台の下に、ヤスリ一挺と、ピストル二挺と、火薬一ポンドと、十二発の弾丸とをかくすことが出来たほど、ちょくちょくやって来てくれた。
— コナンドイル 『グロリア・スコット号』 青空文庫
頻繁に来るので、三日目には誰もが寝台の下にヤスリ一丁と拳銃二丁、火薬一ポンドに二〇発の弾丸とを隠し持つことができた。
— THE "GLORIA SCOTT" 『グローリア・スコット号』 青空文庫
今は身共の力で懲らしめる事は出来ても、この先たびたび病気が再発するようならば、仏作って魂入れずも同然ゆえ、利きのいい薬一服盛ってつかわしましょうぞ。
— 日光に現れた退屈男 『旗本退屈男 第八話』 青空文庫
芍薬一本、我庭園中の最も艶なる者なり。
— 正岡子規 『わが幼時の美感』 青空文庫
ほんとにほんとにはだか武兵衛様は何んというお偉い方であろう」「それに病人を療すと云っても、薬一服盛るのでもなし、荒神の護符を飲ませるのでもない。
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
今でさえ、そう思っている次第です、ああこの病院は万事到れりだが肝心の薬一つが欠けている、と。
— 一九三九年(昭和十四年) 『獄中への手紙』 青空文庫