趾
あと
名詞
標準
文例 · 用例
吹屋の姐さんは吃驚した半身を店から出せば、筆屋の老翁は二三歩往來へ進み出て、共に引き行く人浪の趾を見送る事、少時焉たり。
— 萩原朔太郎 『二十三夜』 青空文庫
同志社講演の暇を盗んで、一昨日から私は鳥羽離宮の遺趾なる京都城南の北向不動堂の方丈の一室を借りて、「或女」の残りを書き上げました。
— "Not till the sun excludes you, do I exclude you; 『●「或る女」巻頭のホイットマンの詩』 青空文庫
それのめぐりを七人の天女は趾頭舞踊しつづけてゐるが、汚辱に浸る月の心になんの慰愛もあたへはしない。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
山を崩して、其の峯を余した状に、昔の城趾の天守だけ残つたのが、翼を拡げて、鷲が中空に翔るか、と雲を破つて胸毛が白い。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
天守の五階から城趾へ飛下りて帰らう!
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
城趾の此の辺は、人里に遠いから、鶏の声、鴉の声より、先づ五位鷺の色に夜が明けやう。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
……魔物だ、鬼だ喚いて、血相を変へてござる……何うも見た処、――未だ此の上に逆上らつしやるなよ――何うやら取逆せて居さつしやるが、はて、」と上下、天守を七分、青年を三分に見較べ、「もの、此処さ城趾の、お天守へ上らつしやりは為ねえかの。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
そんなものさ、甘干の柿見たやうに、軒へぶら下げて売りましつけ、……水損、山抜け、御維新以来、城趾へ草が生へる、濠が埋まる、村も里も無くなりました処へ、路が変つて、旅人も通らぬけえに、根つから家業に成らんでの、私ら、木挽木樵も遣る。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫