立ち出で
たちいで
名詞
標準
文例 · 用例
五十円を故郷の姉から、これが最後だと言って、やっと送って戴き、私は学生|鞄に着更の浴衣やらシャツやらを詰め込み、それを持ってふらと、下宿を立ち出で、そのまま汽車に乗りこめばよかったものを、方角を間違え、馴染みのおでんやにとびこみました。
— 太宰治 『老ハイデルベルヒ』 青空文庫
自分らは汗をふきふき、婆さんが剥いてくれる甜瓜を喰い、茶屋の横を流れる幅一尺ばかりの小さな溝で顔を洗いなどして、そこを立ち出でた。
— 国木田独歩 『武蔵野』 青空文庫
武蔵、木太刀を捨てて塵打ち払い、悠然と立ち出でんとする。
— 山中貞雄 『武蔵旅日記』 青空文庫
何故彼の日本の恋人が、彼を裏切って他の恋人に走ったということが確実に判った朝、彼は、彼の恋人のその宣言のような手紙を受取って読んだ瞬間つと立ち出でて、伯林の仲秋の街路へ出たのか彼にもはっきり判らなかった。
— 岡本かの子 『伯林の落葉』 青空文庫
帰れ帰れ」と追い帰し、重い荷物は各自分担して、駄馬のごとく、背に負い、八溝山万歳を三呼して廃殿を立ち出でた。
— 押川春浪 『本州横断 癇癪徒歩旅行』 青空文庫
「一、山男紫紺を売りて酒を買い候事、山男、西根山にて紫紺の根を掘り取り、夕景に至りて、ひそかに御城下(盛岡)へ立ち出で候上、材木町生薬商人近江屋源八に一俵二十五|文にて売り候。
— 宮沢賢治 『紫紺染について』 青空文庫
『大いなる事業』ちょう言葉の宮の壮麗しき台を金色の霧の裡に描いて、かれはその古き城下を立ち出で、大阪京都をも見ないで直ちに東京へ乗り込んだ。
— 国木田独歩 『河霧』 青空文庫
青年は水車場を立ち出でてそのまま街の方へと足を転しつ、節々空を打ち仰ぎたり。
— 国木田独歩 『わかれ』 青空文庫