裏隣
うらどなり
名詞
標準
文例 · 用例
もう一つ、自分の学生時代に世話になった銀座のある商店の養子になっていた人から聞いた話によると、その実家というのが牛込の喜久井町で、そのすぐ裏隣りとかに夏目という家があった、幼い時のことだから、その夏目家の人については何の記憶もないがその家居のさまなどは夢のように想い出されるとのことであった。
— 寺田寅彦 『埋もれた漱石伝記資料』 青空文庫
そうしてコスモスの花越しに、空地続きになっている裏隣りの二階をあおぎました。
— 夢野久作 『卵』 青空文庫
「私の家じゃありませんよ、裏口の方で板女が来たと云うから、私は裏隣の御新造さんじゃないかと思うて、飛び出てみましたが、何人もいないのですよ、不思議じゃありませんか」 その話を漏れ聞いて集まって来たものは首をかしげた。
— 田中貢太郎 『女賊記』 青空文庫
物見に出ていた男達が壕へかけこんで来て、ソラと出たときはもう裏隣りの有尾さんというところから火の手が出て、次々とうちの左手(門からは右)の一画がやられ、うちはポンプを出しホースの水を物置にジャージャーかけて働きました。
— 一九四五年(昭和二十年) 『獄中への手紙』 青空文庫
私の裏隣りには五〇キロ直撃で、いつぺんに一つの家が火の海になつたが、これを消したのは私の家に同居してゐたタカシ君といふ二十の少年工で、元来は左官職だが、江戸ッ子の職人だから徴用されても会社の規則には服しきれず不平満々、工員としては大いに不良の方だ。
— 坂口安吾 『模範少年に疑義あり』 青空文庫
その小学校は三高木工所の裏隣りであった。
— 坂口安吾 『選挙殺人事件』 青空文庫
裏隣の時計が十一時か十二時かを打続けている。
— 永井荷風 『つゆのあとさき』 青空文庫
細長い地所でしたが、持主に懸けあって、裏隣の地所もいつか譲受ける下約束もしたのです。
— 小金井喜美子 『鴎外の思い出』 青空文庫