抜手
ぬきて
名詞
標準
文例 · 用例
前後の分別に遑無く、用人の素頭、抜手も見せず、ころりと落しぬ。
— 泉鏡花 『妖怪年代記』 青空文庫
勇み立って列の中で抜手を切る生徒があると貝原が大声で怒鳴った。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
「くたびれるから抜手を切っちゃいかん」 河口西側の蘆洲をかすめて靄の隙から市の汚水処分場が見え出した。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
同時に滝太郎の姿も水に沈んだが、たちまち水烟を立てて抜手を切ったのである。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
抜手を切って行く若者の頭も段々小さくなりまして、妹との距たりが見る見る近よって行きました。
— 有島武郎 『溺れかけた兄妹』 青空文庫
お互いの顔を見合う日は最も気分のいい日で、私は病児の髪の伸びたのも苦にするほど何か楽しい母ごころに、不幸な濁流に抜手をきっているような、さなかの逼苦も柔らげられるのであった。
— 鷹野つぎ 『窓』 青空文庫
私は浅い水を頭の上まで跳かして相当の深さの所まで来て、そこから先生を目標に抜手を切った。
— 夏目漱石 『こころ』 青空文庫
道具袋を海にタタッ込んで、抜手を切って沖合いの小舟に泳ぎ付いた。
— 夢野久作 『爆弾太平記』 青空文庫