兎唇
としん
名詞
標準
cleft lip
文例 · 用例
兎唇の手術のために入院している幼児の枕元の薬瓶台の上で、おもちゃのピエローがブリキの太鼓を叩いている。
— 寺田寅彦 『病院風景』 青空文庫
頬には、刀傷や、異様な赤い筋などで、皺が無数にたたまれているばかりでなく、兎唇、瘰癧、その他いろいろ下等な潰瘍の跡が、頸から上をめまぐるしく埋めているのだった。
— 小栗虫太郎 『潜航艇「鷹の城」』 青空文庫
本来ならばそんな事は、恐れ多い次第なのですが、御主人の仰せもありましたし、御給仕にはこの頃御召使いの、兎唇の童も居りましたから、御招伴に預った訳なのです。
— 芥川龍之介 『俊寛』 青空文庫
」 梶王と云うのはさっき申した、兎唇の童の名前なのです。
— 芥川龍之介 『俊寛』 青空文庫
真っ先に桐兵衛を訪ねよう」 兎唇の若い男である。
— 国枝史郎 『南蛮秘話森右近丸』 青空文庫
とにかく、ちょっと待て、御組頭まで伺って来るから」 小者が、奥へ駈けこむと、やがてその者と連れ立って、黒革胴を着込んだ背の小づくりな――そして兎唇の見るからに風采のあがらない武士が出て来た。
— 吉川英治 『大谷刑部』 青空文庫
筑摩則重兎唇になる事、並びに上※の厠の事天文二十四年|乙卯の春、月形城の合戦から半歳ほど過ぎた弥生半ばのことであった。
— 谷崎潤一郎 『武州公秘話』 青空文庫
と云うのは、その傷口が乾上ってから始めてお目通りを許されてみると、殿様の顔が生れもつかぬ兎唇になっていたのである。
— 谷崎潤一郎 『武州公秘話』 青空文庫