庭越し
にわごし
名詞
標準
文例 · 用例
障子の開け閉てにその娘が欄干に凭れて中庭越しにこっちの部屋を伏目で眺めて居る姿が無意識の眼に映るけれども、私はそれどころでなく書きに書いて心積りした通り首尾よく大晦日の除夜の鐘の鳴り止まぬうちに書き上げた。
— 岡本かの子 『健康三題』 青空文庫
(……駄目ですよ、何をなさるんですよ、) 養父が何をはじめたであらうかと思つて、鉛筆を控へて内庭越しに離屋の方を見た。
— 田中貢太郎 『黒い蝶』 青空文庫
船場の宿の座敷から眺めてゐると、梧桐の梢の青々としてゐる庭越しに、隣りの家の物干臺が見えて、幅一寸に長さ五寸ほどの薄い板が、※のやうに細繩で繋いで、ドツサリ乾してあつた。
— 上司小劍 『ごりがん』 青空文庫
その声が中庭越しにきこえる。
— 一九三七年(昭和十二年) 『獄中への手紙』 青空文庫
田中王堂氏の原稿は、書き入れ、書きなおしで御本人さえ一寸困るようだとか、多分藤村氏であった、有名な遅筆だが、(鵠沼の東屋ででもあったのだろう、)おくれて困るので出先まで追っかけて、庭越しに向い合わせの座敷をとって待つことにした。
— 宮本百合子 『狭い一側面』 青空文庫
でこぼこ石の中庭越しに、裏の長屋と家畜小舎が見えた。
— 宮本百合子 『赤い貨車』 青空文庫
露台の上から、下の中庭越しに塀が見えた。
— 宮本百合子 『赤い貨車』 青空文庫
が、ふと彼は円窓から半身を乗り出して、庭越しに通りの方を見てみる。
— 岸田國士 『荒天吉日』 青空文庫