氛囲
氛囲
名詞
標準
文例 · 用例
四十一年十二月 濃霧濃霧はそそぐ……腐れたる大理の石の生くさく吐息するかと蒸し暑く、はた、冷やかに官能の疲れし光――月はなほ夜の氛囲気の朧なる恐怖に懸る。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
濃霧はそそぐ……香の腐蝕、肉の衰頽、――呼吸深く※謨や吸ひ入るる朧たる暑き夜の魔睡……重く、いみじく、音もなき盲唖の院の氛囲気に月はしたたる。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
……湿つた劇薬の結晶、アンチピリンの(頓服剤の)、粉末のやうに――それがまた青白い瓦斯に映つて弊私的里の発作が過ぎた、そのあとの沈んだ気分の氛囲気に落ちついた悲哀の断片がしみじみと降りしきる。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
Sara …… sara …… sara …… sara …… sara ……薄ら青い、冷たい千万の断片が落ついた悲哀の光が、弊私的里の発作が過ぎた、そのあとの沈んだ気分の氛囲気に、しんみりとしたリズムをつくつてしづかに降りつもる。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
夏、夏、夏の薄暮は何時もアーク燈の光のやうに薄紫の涙に濡れ潤つたやるせない寂しい微光の氛囲気を私の心の周囲にかたちづくる。
— 北原白秋 『桐の花』 青空文庫
そうしてこの氛囲気の片隅に身を置いた自分は、眼の前に動く生きた大きな模様の一部分となって、挙止動作共ことごとくこれからその中に織り込まれて行くのだという自覚が、緊張した彼女の胸にはっきり浮んだ。
— 夏目漱石 『明暗』 青空文庫
田舎らしい単純と、避暑地のもつ軽快な華美とが見えない宙で溶け合って、一種の氛囲気を作っている此処では、人間の楽しい魂が、何時も花の咲く野山や、ホテルの白い水楼で古風なワルツを踊っているような気がする。
— 宮本百合子 『追慕』 青空文庫
春の日のほのぼのたる氛囲気に包まれてゐたものは、辛辣な冬の日に酷しくさらし出された。
— 淀野隆三 『思ひ出づるまゝに』 青空文庫