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しずく
名詞
1
標準
文例 · 用例
ようやく川を渉る、足袋底がこそばゆいから、草鞋を釈いて足袋を振うと、粗製のザラメ砂糖のような花崗の砂が、と共に堕ちる。
小島烏水 梓川の上流 青空文庫
二ノ池の方に廻る、池には石が座榻のように不規則に、水面に点じている、岸には淡紅の石楠花が水に匂う、蛇紋が掻き破られて、また岩魚が飛ぶ、石楠花のを吸っている魚だから、腸まで芳芬に染まっていないかとおもう。
小島烏水 梓川の上流 青空文庫
七月の炎天も、この谷間までは迫って来ないと見えて、白剥山を一つ超えて、東俣の谷へ来ると、未だ若葉、青葉の新緑が、生々しかったが、ここまで溯ると、濶葉、細葉は、透明を含んだ、黄の克った、明るみのある嫩い緑で、霧のにプラチナのように光った裏葉を翻えしている。
小島烏水 白峰山脈縦断記 青空文庫
それから尾根を伝わって、下り気味になる、ちょいちょい小さく尖った山稜は、大波の間に、さざ波をだぶだぶ打ち寄せたようで、爪先が上ったり下ったりする、石の皺には、黄花の石楠花が、ちらほら咲いている、この花の弁で承けた霧のを吸ったときは、甘酸っぱい香気で、胸が透いた。
小島烏水 谷より峰へ峰より谷へ 青空文庫
嘉代吉と人夫が荷を卸して、油紙で庇を拵えてくれるのを、待ち兼ねて、石の中へ潜って寝た、雨はざんざ降りになって、庇から岩を伝わっては、ポタポタが落ちる、防水布の外套に包まれて、ココアを一杯興奮剤に飲んだまま、飯も喰わずにたわいもなく痲痺したようになって寝た。
小島烏水 谷より峰へ峰より谷へ 青空文庫
こういう時、下りて見ると、麓の草原は雨ので緑がシットリと輝くのと対照して、山の新しい雪が、キラキラと雲母のように光って、雪と雨とを区別する境界線が、山の中腹に引かれている。
小島烏水 高山の雪 青空文庫
ちょうどボートレースに、櫂からのが、河面にポタポタして、小さな円い輪を描いたのに似ている。
小島烏水 高山の雪 青空文庫
私は山を包む濃雲に絶望しながらも、屋根へ這い上って、虚空を見ていると、眼の前を灰色の霧は、渦巻いて、髯を伝わる呼吸が、となってポタポタ落ちる、鉛筆をポッケットから出して、弟が寒暖計を見て報告する温度を、手帖に記していると、傍から鉛筆の墨が滲んで、文字が紙の上で解体するほどの霧だ。
小島烏水 雪中富士登山記 青空文庫
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