引き離し
ひきはなし
名詞
標準
文例 · 用例
なぜならその古机でさへが、やはり彼の居間の中で、彼の家族たちと一緒に、彼の構成してゐる家のアトモスフィアの中でのみ、始めて藝術的に美しく調和するので、單獨に引き離してしまつては、普通の平凡なガラクタ道具に變つてしまふからである。
— 萩原朔太郎 『所得人 室生犀星』 青空文庫
作者は人物の氣持や場面を近くに引付けてヴイヴイツドに書くことに長じてゐる人であるが、この作品ではそれを引き離して書いてゐる。
— 梶井基次郎 『『新潮』十月新人號小説評』 青空文庫
まるで移り氣な海のやうに引き離したり、引き寄せたりするお前、――かと思ふと、お前はその硝子に映る私達の姿をその向う側に見えるものと混んぐらかせたりする。
— ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 『窓』 青空文庫
それがあたかも、貴方のすぐお傍にゐる時ですら、貴方から自分を引き離してゐる病氣ででもあるかのやうに。
— ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 『巴里の手紙』 青空文庫
そして私の足もとから私の歩みを引き離して、それでもつて町の向う側を、木靴でもつてのやうに鳴らしだした。
— ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 『「マルテ・ロオリッツ・ブリッゲの手記」から』 青空文庫
理想とは抽象的のもの、現実を超越したものだとして、理想を必ず現実から引き離して、高く上にかかっているとかあるいは将来その理想が遂げられるだろうという期待だけして、今直ぐ手が届かんと決めてかかっております。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
その時、母はいいわけするのもあほらしいという顔だったが、一つにはいいわけする口を利く力もないくらい衰弱しきっていて、私に乳を飲ませるのもおぼつかなく、びっくりした産婆が私の口を乳房から引き離した時は、もう母の顔は蝋の色になっていて歯の間から舌の先を出しながら唸っていたそうです。
— 織田作之助 『アド・バルーン』 青空文庫
とかくする内|看守、押丁ら打ち寄りて、漸く氏家を磯山より引き離したり。
— 福田英子 『妾の半生涯』 青空文庫