雪消
ゆきげ
名詞
標準
文例 · 用例
まひる利根川のほとりを歩めば、二人歩めばしばなくつぐみ、つぐみの鳴くに感じたるわが友のしんじつは尚深けれども、いまもわが身の身うちよりもえいづる、永日の嘆きはいやさらにときがたし、まことに故郷の春はさびしく、ここらへて山際の雪消ゆるを見ず。
— 萩原朔太郎 『利根川の岸邊より』 青空文庫
それはその半年ほど前からひそかに想をかまへてゐた「雪消の日まで」と云ふ百枚ばかりの處女作をここで書き上げようと云ふ希望が、私の全身を刺戟してゐたからだつた。
— 南部修太郎 『處女作の思ひ出』 青空文庫
出發前、その旅先の苫小牧でと計畫してゐた處女作「雪消の日まで」は可成りな苦心努力にも拘らず、遂に一部分をさへ書き上げることが出來なかつた。
— 南部修太郎 『處女作の思ひ出』 青空文庫
さらにまた、N君はべつな本をひらいて私に見せたが、それには、「翌天保四年に到りては、立春吉祥の其日より東風頻に吹荒み、三月上巳の節句に到れども積雪消えず農家にて雪舟用ゐたり。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
開墾地宮沢賢治焦ぎ木のむらはなほあれば山の畑の雪消えて〔以下なし〕 ――――――――青年団が総出にてしだれ桜を截りしなり
— 宮沢賢治 『開墾地』 青空文庫
あのつんとすまし、ぬけぬけと白膚を天に聳え立たしている伯母の山が、これだけは拭えぬ心の染班のように雪消の形に残す。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
巖陰の雪消になづみ。
— 長塚節 『長塚節歌集 上』 青空文庫
紅梅雪消の岡のせせらぎや、流れ流れてゆくすゑは、蓴菜つのぐむ大澤へ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫