祖伝
そでん
名詞
標準
文例 · 用例
先祖伝来の所謂恒産があるものだから、おのづから恒心も生じて、なかなか礼儀正しいものである。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
債鬼のために、先祖伝来の田地を取られた時にも、おしかはもう愚痴をこぼさなかった。
— 黒島傳治 『老夫婦』 青空文庫
」T「大吉が俺がまこと武士なら 先祖伝来の千五百石 戴いて、錦糸堀に くすぶってるわ」 と言い放ち、更に、T「有難い事に 俺は武士じゃない」 半次が「武士でなかったら何ですい」 大吉、T「自由気儘の 悪たれ小僧よ」 言い度い事言って了うと大吉出掛けようとするので、 五郎蔵がとめた。
— 山中貞雄 『中村仲蔵』 青空文庫
元来地所持で資産の充分な池上の家では、瀬戸物町の店の麻問屋は、先祖伝来の商売を持ち伝えるというだけで発展の慾望はない。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
しかるに、盆踊りは野蛮の遺風だとかなんとかいって、一も二もなく先祖伝来の盆踊りを禁止し、他に楽み少なき農民の娯楽を奪い去るとは、当世の役人や警官はよくよく冷酷な根性になったものかな。
— 押川春浪 『本州横断 癇癪徒歩旅行』 青空文庫
今私の話した諸民族の様な運命を選ばねばならぬか、或いは之を切抜けて、諸君の子孫が此の父祖伝来の地で、諸君の記憶を讃えることが出来るようになるか、その最後の危機が迫っているのですぞ。
— 中島敦 『光と風と夢』 青空文庫
例えば、先週勤め先の学校で国漢の老教師が近作だという七言絶句を職員室の誰彼に朗読して聞かせていた時、父祖伝来の儒家に育った自分が冗談半分その韻をふんで咄嗟に酬いて見せた。
— 中島敦 『狼疾記』 青空文庫
大刀老人は、とうとう先祖伝来の大切な一幅を売払って、金の工面をしようときめた。
— 夏目漱石 『永日小品』 青空文庫