雑不
ざつふ
名詞
標準
文例 · 用例
しかしこの連想による甲乙二つの対象は決して簡単な論理的または事件的の連絡をもっているものではなくて、たとえば前条に述べた夢の中の二つの物のつながりのように複雑不可思議な糸によってつながっているのである。
— 寺田寅彦 『連句雑俎』 青空文庫
訓練不足の民衆と、乱雑不整頓、無茶苦茶の都会交響楽であり、飛鳥山の花見の泥酔の中で競馬が始まった位の混乱だ。
— 大切な雰囲気 『大切な雰囲気』 青空文庫
或暮に、私はショールを巻きつけておとその道具を買いに出かけ、いろいろ見て或ものは手に迄とって将に買おうとしたが、どうしても心に買わせぬものがあって遂に買わず、複雑不思議な思いに深く沈んでかえったことがあった。
— 一九三七年(昭和十二年) 『獄中への手紙』 青空文庫
少くとも人間ほど複雑不純ではありません。
— ――近代説話―― 『道標』 青空文庫
腰掛けの一つは逆さまに倒れ、紙屑、煙草の吸殻など散らばり、乱雑不潔なるさま。
— ――十四の場面―― 『安重根』 青空文庫
すべてそれらのもの、法律や偏見や事実や人物や事物などは、神が文明なるものに与えた複雑不可思議な運動によって彼の上を往来して、残忍のうちにこもる言い難き静けさと、無関心のうちにこもる言い難き酷薄さとをもって、彼の上を踏みつけ彼を踏みつぶした。
— LES MISERABLES 『レ・ミゼラブル』 青空文庫
十五六人集った倶楽部の会員は、いずれも金と時間の使い途に困ると言った人達ばかり、煙草を輪に吹くもの、好きな飲物を舐めるもの、乱雑不統一の限りを尽して、雑談に耽って居りますが、腹の底から退屈し切って居ることだけは、倶楽部員全体に通じた心持でした。
— 野村胡堂 『古城の真昼』 青空文庫
軍人たるものは、フィロポイメンがいったように、どんな乱雑不規則な生活にも慣れなければならない。
— ESSAIS DE MONTAIGNE 『モンテーニュ随想録』 青空文庫