陰火
いんか
名詞
標準
文例 · 用例
百万遍の数取りのように、一同ぐるりと輪になって、じりじりと膝を寄せると、千倉ヶ沖の海坊主、花和尚の大きな影が幕をはびこるのを張合いにして、がんばり入道、ずばい坊、鬼火、怪火、陰火の数々。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
とこの名のる時、ちらちらと遠近に陰火燃ゆ。
— 泉鏡花 『夜叉ヶ池』 青空文庫
」 と苦笑をして又俯向いた……フと氣が付くと、川風に手尖の冷いばかり、ぐつしより濡らした新しい、白い手巾に――闇夜だと橋の向うからは、近頃聞えた寂しい處、卯辰山の麓を通る、陰火、人魂の類と見て驚かう。
— 泉鏡太郎 『月夜』 青空文庫
……妖怪、変化、狐狸、獺、鬼、天狗、魔ものの類、陰火、人魂、あやし火一切、生霊、死霊、幽霊、怨念、何でも構わねえ。
— 泉鏡花 『露萩』 青空文庫
慶応四年の春の夜ふけの遅い月が、陸奥二本松の十万石をそのひと色に塗りこめて陰火のように青白かった。
— 佐々木味津三 『十万石の怪談』 青空文庫
されど、神もし地獄の陰火を点し、永遠限りなくそれを輝かさんと欲せんには、まず公刑所の建物より、回教式の丈高き拱格を逐うにあらん。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
その憔悴したさま、滴のしたたる蓬のような髪の毛、それを仄めぐって、陰火のような茫々としたものが燃えあがっている。
— 小栗虫太郎 『地虫』 青空文庫
鼻の丸い、卵なりの輪郭をした、どこか病的らしい暗黄色の、それでいて、人を食ったような三伝の顔が、いまは仄かに陰火をめぐらす怖ろしげなものになってゆく。
— 小栗虫太郎 『地虫』 青空文庫