焼鏝
やきごて
名詞
標準
文例 · 用例
人種がちがうものだとばっかり思っていたが、あにはからんや、僕の額にもはっきり落第生の焼鏝が押されてしまった。
— 太宰治 『正義と微笑』 青空文庫
――「しまつた」とかの女は胸に焼鏝を当てた。
— 岡本かの子 『花は勁し』 青空文庫
独り居室にいるときでも、夜、牀上に横になったときでも、ふとこの屈辱の思いが萌してくると、たちまちカーッと、焼鏝をあてられるような熱い疼くものが全身を駈けめぐる。
— 中島敦 『李陵』 青空文庫
すると、櫛巻の女房が小さい焼鏝を焼いて、管の合せ目へ、ジューとハンダを流す。
— 小栗風葉 『世間師』 青空文庫
黒光りする用箪笥から幾束かの紙幣を取り出して、一枚一枚丁寧に焼鏝をあてて皺を延ばして行くのであった。
— 大切な雰囲気 『大切な雰囲気』 青空文庫
しかしその老人は全くの無慾の状態において、専念紙幣に焼鏝をあてていたが、彼はそれによって世を忘れ、時を忘れ、今日は九十何度という事も忘却する事が出来、あらゆる他の慾望を持たなかった。
— 大切な雰囲気 『大切な雰囲気』 青空文庫
其れが焼鏝を当てる様になり、乃至「ヌマ」と云ふ曲つたピンに巻いて縮らす様になると、癖を附けぬ毛の三倍程も毛は膨れるが、其右に曲り合つた髪が真直な歯の櫛に梳かれる時に切れ落ちるのは是非もない。
— 與謝野寛、與謝野晶子 『巴里より』 青空文庫
それを型から出して焼鏝を当てるのですがクリームでなければ焦げた痕が付きません。
— 秋の巻 『食道楽』 青空文庫