幻辞.com

牙彫り

げぼり
名詞
1
標準
文例 · 用例
緑のゴブラン織のやうな蔦の茂みを背景にして背と腰で二箇所に曲つてゐる長身をやをら伸ばし、箒を支へに背景を見返へる老女の姿は、夏の朝靄の中に象牙彫りのやうに潤んで白く冴えた。
岡本かの子 蔦の門 青空文庫
そのあるものは、肥り肉の球根がむつちりとした白い肌もあらはに、寒々と乾いた土の上に寝転んだまま、牙彫りの彫物のやうな円みと厚ぽつたさとをもつて、曲りなりに高々と花茎と葉とを持ち上げてゐる。
薄田泣菫 水仙の幻想 青空文庫
そして、象牙彫りの仕事場の隅におかれた、手箪笥をゴトゴトやっていたが、やがて、小さな象牙彫りの印籠を持って来た。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
一日、引っ込んで、仕事場にばかりいる、変人の象牙彫りと、どこまでも、思い込ませて置きたいのだし、島抜けの法印は、当分の間、人前に、顔を曝せたものではない。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
親方――」 若い衆はいつも切ればなれのいい、象牙彫りの親方と思うので、目顔で、歓迎の意を表して、何もかくさず、「生憎でござんしたねえ、若親方は、ついさき程、どこへかお出かけになりましたが――こないだ火事に逢った、お贔屓さんへ、見舞にゆくとか。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
ところが、木彫りがこんなに微々として振わぬに反して、象牙彫りは実に盛んになって来ました。
象牙彫り全盛時代のはなし 幕末維新懐古談 青空文庫
この時分は、正に、牙彫り全盛時代といってもよろしい位、ちょうど、それは西洋人の趣味|嗜好に投じ、横浜貿易の貿易品にそっくり適ったのでありますから、それはまことに素晴らしい勢いとなった。
象牙彫り全盛時代のはなし 幕末維新懐古談 青空文庫
つまり、象牙彫りは見る通り、美しくて可愛らしく、それになかなか精巧な細工が出来て、大人の玩弄には持って来いのように出来ているものであるから、西洋人の眼にそれが珍奇に見えて購買慾をそそられたのは道理のことと思われる。
象牙彫り全盛時代のはなし 幕末維新懐古談 青空文庫