恙
恙
名詞
標準
文例 · 用例
むかし源義経、高館をのがれ蝦夷へ渡らんと此所迄来り給ひしに、渡るべき順風なかりしかば数日逗留し、あまりにたへかねて、所持の観音の像を海底の岩の上に置て順風を祈りしに、忽ち風かはり恙なく松前の地に渡り給ひぬ。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
もし、あの、私が勝となれば、此のお方の其の奥様を、恙なう、お戻しになりますやうに……お約束が出来ませうか。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
されど気丈なる女なれば、今なお恙なかるべし。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
「若し恙なく暮してゐるのだつたら、もう學校へあがつてゐる筈だ。
— 梶井基次郎 『川端康成第四短篇集「心中」を主題とせるヴァリエイシヨン』 青空文庫
此幸運に乘じて、吾等は温順に昨日の道を皈つたならば、明日の今頃には再び海岸の櫻木大佐の家に達し、此旅行も恙なく終るのであるが、人間は兎角いろ/\な冐險がやつて見たい者だ。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
四晝夜の航海は恙なく機關の響のみぞ悽まじかつた。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
多忙と微恙に煩わされてはなはだまとまりの悪い随筆になってしまったのは遺憾である。
— 寺田寅彦 『俳句の精神』 青空文庫
ここ一時間を無事に保たば、安危の間を駛する観音丸は、恙なく直江津に着すべきなり。
— 泉鏡花 『取舵』 青空文庫