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濡々

濡々
名詞
1
標準
文例 · 用例
膚が衣を消すばかり、其の浴衣の青いのにも、胸襟のほのめく色はうつろはぬ、然も湯上りかと思ふ温さを全身に漲らして、髮の艶さへ滴るばかり濡々として、其がそよいで、硝子窓の風に額に絡はる、汗ばんでさへ居たらしい。
泉鏡太郎 人魚の祠 青空文庫
時々ぽつりと来るのは――樹立は暗いほどだけれど、その雫ばかりではなさそうで、鎮守の明神の石段は、わくら葉の散ったのが、一つ一つ皆|蟹になりそうに見えるまで、濡々と森の梢を潜って、直線に高い。
泉鏡花 貝の穴に河童の居る事 青空文庫
はきものも、襦袢も、素足も、櫛巻も、紋着も、何となくちぐはぐな処へ、色白そうなのが濃い化粧、口の大きく見えるまで濡々と紅をさして、細い頸の、真白な咽喉を長く、明神の森の遠見に、伸上るような、ぐっと仰向いて、大きな目を凝と※った顔は、首だけ活人形を継いだようで、綺麗なよりは、もの凄い。
泉鏡花 売色鴨南蛮 青空文庫
」 という、斜に見える市場の裏羽目に添って、紅蓼と、露草の枯れがれに咲いて残ったのが、どちらがその狐火の小提灯だか、濡々と灯れて、尾花に戦いで……それ動いて行く。
泉鏡花 古狢 青空文庫
が、じれったそうな女房は、上気した顔を向け直して、あれ性の、少し乾いた唇でなぶるうち――どうせ亭主にうしろ向きに、今も髷を賞められた時に出した舌だ――すぼめ口に吸って、濡々と呂した。
泉鏡花 薄紅梅 青空文庫
お孝は胸に抱いて仰向けに接吻していた、自分のよりは色のまだ濡々と紅な、お千世の唇を放して、「お湯を頂きましても可うござんすか、旦那。
泉鏡花 日本橋 青空文庫
) といった、お絹の目が鯉の目より濡々としたのが記憶にある……といった見物で。
泉鏡花 白花の朝顔 青空文庫
……手拭を口に銜えた時、それとはなしに、面を人に打蔽う風情が見えつつ、眉を優しく、斜だちの横顔、瞳の濡々と黒目がちなのが、ちらりと樹島に移ったようである。
泉鏡花 夫人利生記 青空文庫