末黒
すぐろ
名詞
標準
文例 · 用例
大正十年友人と「末黒野」なる歌集を印刷す。
— 中原中也 『我が詩観』 青空文庫
鶴よ、來いよ、と呼びたまへば、折から天下太平の、蒼空高く伸したりける、丹頂千歳の鶴一羽、ふは/\と舞ひ下りて、雪に末黒の大紋の袖を絞つて畏る。
— 泉鏡花 『妙齡』 青空文庫
油じむ末黒の文字のいくつらね悲しともなく誦しゆけど、響らぐ声は※びてゆく鉛の悔、しかすがに、強き薫のなやましさ、鉛の室はくわとばかり火酒のごとき噎びして壁の湿潤を玻璃に蒸す光の痛さ。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
二月の一夜きさらぎ寒のゆふべや、牧のうなゐも通はね、眺めよ、寂しき末黒小野に、ささら河門水かれて、濕ひ足らぬ荒びや、艮風のかざ吹、羽むけ強に、根白たか萱うら葉のいたづらさやぎにささと鳴りぬ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
この末黒野のゆふぐれ、二月寒のさびれに、よろづの實母おほみ慈悲のふところ深く隱れて、やがても往かむ彼方の常春あけぼの望み得るぞ、吾世の祕密、――憂身の光や、日も夜も醉ひてあらめ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
「攘夷主義は、幕府の末黒船始めて来航した時のみの迷信ではない。
— 木下尚江 『自由の使徒・島田三郎』 青空文庫
この唇には、あとで赤いインクを塗つてみたが、妙にどすぐろくなつていやな感じがして來たから、私は小刀ですつかり削りとつて了つた。
— 太宰治 『思ひ出』 青空文庫
きたない貝殻に附着し、そのどすぐろい貝殻に守られている一粒の真珠である。
— 太宰治 『美少女』 青空文庫