股引き
ももひき
名詞
標準
文例 · 用例
盲縞の腹掛け、股引きに汚れたる白小倉の背広を着て、ゴムの解れたる深靴を穿き、鍔広なる麦稈帽子を阿弥陀に被りて、踏ん跨ぎたる膝の間に、茶褐色なる渦毛の犬の太くたくましきを容れて、その頭を撫でつつ、専念に書見したりしが、このとき鈴の音を聞くと斉しく身を起こして、ひらりと御者台に乗り移れり。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
ただいまとても別にぶちょうほうのあったわけではござりませんが、股引きが破れまして、膝から下が露出しでござりますので、見苦しいと、こんなにおっしゃります、へい、御規則も心得ないではござりませんが、つい届きませんもんで、へい、だしぬけにこら!
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
なんだ、高がこれ股引きがねえからとって、ぎょうさんに咎め立てをするにゃあ当たらねえ。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
主の抱え車じゃあるめえし、ふむ、よけいなおせっかいよ、なあ爺さん、向こうから謂わねえたって、この寒いのに股引きはこっちで穿きてえや、そこがめいめいの内証で穿けねえから、穿けねえのだ。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
記者は少々落胆の気味で、今度築地に出来た魚市場に行って見ると、居た居た、鬚を皮の下まですり込んで、肉に喰い込むような腹かけ股引きに、洗い立ての白鉄火を着た兄い連が、新しい手拭を今にも落ちそうに頭のテッペンに捲き付けて、駈けまわっていた。
— 夢野久作 『街頭から見た新東京の裏面』 青空文庫
二月二十三日定京洛寒徹骨の詩を見たまひて、須磨伯父上わざわざ真綿入りの股引きを郵送され、今また遠くより木炭を持たせて使を寄越されたれば、痛み入りつつ、礼状のはしに書きつけし一首揀得幽居寄老身 幽居を揀び得て老身を寄す、門前掃迹馬蹄塵 門前迹を掃ふ馬蹄の塵。
— 河上肇 『閉戸閑詠』 青空文庫
細い縞の袷を着、紺の帯を腰で結び、股引きを穿いた足袋跣足、小造りの体に鋭敏の顔付き。
— 国枝史郎 『三甚内』 青空文庫
「ひとつ所ばっかり投げるじゃないよ、ぐるぐると、四方に、まんべんなく」 はんてんの短かい裾を、それさえ邪まッけに尻までからげ、今日の日のために匂うような紺の股引きをはいて来た松岡長吉は、つまり棟梁次席をもって任じていた。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫