縫い掛け
ぬいかけ
名詞
標準
文例 · 用例
もう間もなく入用になる子供の袷の縫い掛けてあるのも縫わなくてはならない。
— 森鴎外 『雁』 青空文庫
この御天気にそんな厚いものを着て出るなんて」「何、日が暮れたら寒いだろうと思って」と小六は云訳を半分しながら、嫂の後に跟いて、茶の間へ通ったが、縫い掛けてある着物へ眼を着けて、「相変らず精が出ますね」と云ったなり、長火鉢の前へ胡坐をかいた。
— 夏目漱石 『門』 青空文庫
」 兄さんはそう言って屈託なく笑って帰りましたけれど、私は勝手口に立ったままぼんやり見送り、それからお部屋へ引返して、母の物問いたげな顔にも気づかぬふりして、静かに坐り、縫いかけの袖を二針三針すすめました。
— 太宰治 『誰も知らぬ』 青空文庫
で、また縫いかけの仕事を始めた。
— ――二つの連作―― 『春』 青空文庫
妻は枕元の火鉢の傍で縫いかけの子供の春着を膝へのせたまま、向うの唐紙の更紗模様をボンヤリ見詰めて何か考えていたが、思い出したように、針を動かし始める。
— 寺田寅彦 『枯菊の影』 青空文庫
葉子はこのごろの貞世はほんとうに変だと思いながら、愛子の縫いかけの布を取り上げて見た。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
……またゆっくりね……あ、愛さん、あなたお二階に行って縫いかけを大急ぎで仕上げて置いてちょうだい、ねえさんがあらかたしてしまってあるけれども……」 そういって先刻から逐一|二人の争論をきいていたらしい愛子を階上に追い上げた。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
いま縫いかけている春着はあしたでなければ仕立てあがらないから、どうかあさってに延ばしてもらいたいと言った。
— 岡本綺堂 『籠釣瓶』 青空文庫