心ならずも
こころならずも
副詞
標準
unwillingly
文例 · 用例
道中にも旅店にも、我儘ばかり申して、今更お恥しう存じます、しかし俥、駕籠……また夏座敷だと申すのに、火鉢に火をかんかん……で、鉄瓶の湯を噴立たせるなど、私としましては、心ならずも止むことを得ませんので、決して我意を募らせた不届な次第ではありません。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
心ならずも、ハムレットさまの御愁傷の筋に触れてしまいました。
— 太宰治 『新ハムレット』 青空文庫
殊にも先年、やはり内々ごひいきだつた畠山の御一族を心ならずも失ひなされてからは、この唯一の生きのこりの大功臣をいよいよ大事においたはりなされ、このたびの上総の国司所望の事もなるべくは御許容なされたいやうな御様子が私たちにさへほの見えてゐたのでございます。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
御用うけたまはりて已に半年、未熟ながらも腕限り根かぎりに、夜晝となく打ちましても、意にかなふほどのもの一つも無く、更に打ち替へ作り替へて、心ならずも延引に延引をかさねましたる次第、なにとぞお察しくださりませ。
— 岡本綺堂 『修禪寺物語』 青空文庫
五郎は心ならずも曳かるゝまゝに、打連れて橋を渡りゆく。
— 岡本綺堂 『修禪寺物語』 青空文庫
すでに早く、彼と親しかった狐鹿姑単于は死に、その子|壺衍※単于の代となっていたが、その即位にからんで左賢王、右谷蠡王の内紛があり、閼氏や衛律らと対抗して李陵も心ならずも、その紛争にまきこまれたろうことは想像に難くない。
— 中島敦 『李陵』 青空文庫
美沢さんなんか、心ならずも、私と仲よしになったもんだから、今になって何か云うと、私にばかり責任を被せたがるのよ。
— 菊池寛 『貞操問答』 青空文庫
お節という女がよくねえ奴で、気違いの振りをして亭主を殺して、自分は川へ飛び込んだ振りをして、うまく泳いで逃げようとしたところが、案外に水が増しているか、流れが早いか、それがために心ならずも押し流されて、狂言が本当になってしまったというようなことがねえとも限らねえ。
— 大阪屋花鳥 『半七捕物帳』 青空文庫