行き悩み
いきなやみ
名詞
標準
文例 · 用例
夫人が、氷とぢ岩間の水は行き悩み空澄む月の影ぞ流るる と言いながら、外を見るために少し傾けた顔が美しかった。
— 朝顔 『源氏物語』 青空文庫
木山の納屋には、米杉の角材や板や、内地ものの細かいものが少しあるだけだつたが、方々駈けまはつて漸と入用だけのものを取そろへ、今度こそは一と儲けする積りで、トラック三台で搬びつけたのだつたが、工事は中途から行き悩みで、木山が気を揉み出した頃には、既に親方も姿を晦ませてゐた。
— 徳田秋声 『のらもの』 青空文庫
彼は抜裏と間違えて袋の口へ這入り込んだ結果、好んで行き悩みの状態に悶えているのでは無かろうかと、自分で自分の判断を危ぶみ出した。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
五百と成善とは、優善が雪中に行き悩みはせぬか、病み臥しはせぬかと気遣って、再び人を傭って捜索させた。
— 森鴎外 『渋江抽斎』 青空文庫
それが隣り村にもきこえたので、縁談は中途で行き悩みになった。
— 小女郎狐 『半七捕物帳』 青空文庫
日本における大財閥を背景とする自由党は社会党が総選挙で勝利したことを日本における勤労大衆の急進勢力の進出であるとみて、吉田自由党総裁は選挙直後、組閣行き悩みの際に公然と反共声明を行った。
— 宮本百合子 『今日の日本の文化問題』 青空文庫
彼は無風帯を横ぎる帆船のように、動詞のテンスを見落したり関係代名詞を間違えたり、行き悩み行き悩み進んで行った。
— 芥川龍之介 『保吉の手帳から』 青空文庫
軍部は東條閥で固まっているので、こんどの辞職には反対でいろいろの行き悩みがあったという。
— 清澤洌 『暗黒日記』 青空文庫